| ピナ・バウシュ
が非常に頭の良い女性であり、私たちに何かを伝えようとしているのは明らかです。(その「何か」
の正体については議論の余地がありますが。)真っ白な壁に囲まれ、左右と後方に黒い出入口が除
く舞台セットの上で展開するこの作品は、テーブルの上に二人の男性が隣り合わせに座っている場
面から始まります。二人は視線も交わさず、互いの存在を意識する様子も見せませんが、片方がテ
ーブルから転げ落ちそうになると、ギリギリのタイミングでもう片方が彼を掴まえ、見事なシーソ
ーゲームのようなバランスを保ちます。何が起きたのか気にする素振りも見せず、そのまま二人は
同じことを何回か繰り返します。ここに本作品の二つの主題−−繋がりの欠如、そして危機一髪で
互いを救出する人々−−が提示されています。人は互いに手を差し伸べ、応答または拒絶を受け、
痛みと孤独を感じます。それでも転びそうになったときには、言い寄った相手とは限りませんが、
誰かが助けてくれるのです。
「過去と現在と未来の子供たちのために」は小道具や短い台詞を用いた演劇的なイベントで構成され、ポストモダン調のソロが
随所に差し挟まれています。しかしながらこれらのソロは、少しのバリエーションはあるものの全部同じような振付けに見えま
した。素晴らしく訓練されたダンサーたちはしなやかで軽やかですが、振付け自体からはポストモダン特有の漠然とした唯我論
以外は何も感じ取れませんでした。繋がりの欠如を表すためこのようなスタイルを選んだのかもしれませんが、同じ事を表現す
るにしても、一考すれば冒頭のシーンのようにもっとグッとくるような伝達表現を用いることも出来たはずです。台詞つきの場
面は短くとも、すべての美しい動き以上に効果的でした。動く壁や砂の城など次々に変る風景は面白く、どんな状況にあっても
人生は困難であるということを示しているようです。
バウシュはとても興味深い精神の持ち主であり、その表現には不明瞭なものもありますが、ダンサーたちと同じく彼女自身もまた
私たち観客に手を差し伸べ、どちらかが相手を受け止めることを願っているのでしょう。子供たちへの彼女のメッセージはハッピ
ーではありませんが、誠実なものです。
芸術性
★★★★
娯楽性 ★★★★
斬新さ ★★★
癒し度 ★★★
(Updated on 3/10/05)
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