アーツ・キュア 2004年 10月・11月のレビュー
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ダンス レビュー

過去と現在と未来の子供達のために
ピナ・バウシュ・ブッパタール・ダンスシアター

Performed at Japan Society
Reviewed on 11/20/04
by Roberta Pikser

Translated
by Rieko Yamanaka

前向きな憂鬱

 ピナ・バウシュ が非常に頭の良い女性であり、私たちに何かを伝えようとしているのは明らかです。(その「何か」 の正体については議論の余地がありますが。)真っ白な壁に囲まれ、左右と後方に黒い出入口が除 く舞台セットの上で展開するこの作品は、テーブルの上に二人の男性が隣り合わせに座っている場 面から始まります。二人は視線も交わさず、互いの存在を意識する様子も見せませんが、片方がテ ーブルから転げ落ちそうになると、ギリギリのタイミングでもう片方が彼を掴まえ、見事なシーソ ーゲームのようなバランスを保ちます。何が起きたのか気にする素振りも見せず、そのまま二人は 同じことを何回か繰り返します。ここに本作品の二つの主題−−繋がりの欠如、そして危機一髪で 互いを救出する人々−−が提示されています。人は互いに手を差し伸べ、応答または拒絶を受け、 痛みと孤独を感じます。それでも転びそうになったときには、言い寄った相手とは限りませんが、 誰かが助けてくれるのです。

 「過去と現在と未来の子供たちのために」は小道具や短い台詞を用いた演劇的なイベントで構成され、ポストモダン調のソロが 随所に差し挟まれています。しかしながらこれらのソロは、少しのバリエーションはあるものの全部同じような振付けに見えま した。素晴らしく訓練されたダンサーたちはしなやかで軽やかですが、振付け自体からはポストモダン特有の漠然とした唯我論 以外は何も感じ取れませんでした。繋がりの欠如を表すためこのようなスタイルを選んだのかもしれませんが、同じ事を表現す るにしても、一考すれば冒頭のシーンのようにもっとグッとくるような伝達表現を用いることも出来たはずです。台詞つきの場 面は短くとも、すべての美しい動き以上に効果的でした。動く壁や砂の城など次々に変る風景は面白く、どんな状況にあっても 人生は困難であるということを示しているようです。

 バウシュはとても興味深い精神の持ち主であり、その表現には不明瞭なものもありますが、ダンサーたちと同じく彼女自身もまた 私たち観客に手を差し伸べ、どちらかが相手を受け止めることを願っているのでしょう。子供たちへの彼女のメッセージはハッピ ーではありませんが、誠実なものです。  

芸術性 ★★★★
娯楽性 ★★★★
斬新さ ★★★
癒し度 ★★★

(Updated on 3/10/05)

ダンス レビュー

アメリカン・バレエ・シアター


Performed at City Center
Reviewed on 10/31/04
by Celeste Sunderland
Translated by Rieko Yamanaka

ネズミの魔法、薔薇の求愛、またしても楽しませてくれたABT

 10月31日、シティ・センターではアメリカン・バレエ・シアターのマチネ公演が行われ、ちょっとしたハロウィン の魔法に包まれました。ケビン・マッケンジー振付の“ザ・バレリーナ”の世界初演で、主役のネズミのキャラクタ ー「アンジェリーナ・バレリーナ」がステージに現れると、妖精の羽やお姫様のような冠をつけた小さな少女たちが 喜びの声を上げました。ピンクのチュチュを着たこの太っちょの白ネズミさんは、作品の合間にカーテンの後ろから 現れて観客に挨拶していましたが、やがては自らスポットライトを浴び、同じステージ上のヴェロニカ・パートとマ キシム・ベロセルコフスキーを唖然とさせました。典型的なバレリーナの体型には程遠いアンジェリーナは、二人の プリンシパルの繰り広げる情熱的なドラマに割り込んでは、端から観ても好感のもてるほどの集中力で自らの振付を 踊り、何気なくリフトまでもこなしていました。

 この日は子供向けのエンターテイメントに加え、古典的な作品もいくつか披露されました。ミシェル・フォキーンの神秘的な“薔薇の精”では ハーマン・コルネホが薔薇役、シオマラ・レイエスが少女役をそれぞれ演じました。初めての舞踏会の思い出を夢見る少女を見事に演じたレイエス は、椅子に座ったまま恍惚とし、物憂げに薔薇の香りを嗅ぎ、やがてはその薔薇の精と一緒に踊ります。二ジンスキーの情熱を思わせる演技をした コルネホは、取りすました様子で部屋を漂い、最後はお馴染みの優雅な跳躍で窓から飛び出して行きました。  この日の幕開きはジリアン・マーフィーとマルセロ・ゴメスが主役を務めた、バランシン振付の“テーマとバリエーション”でした。ゴメスはパ ワー不足を現実離れした優雅さで補いました。そこにマーフィーの正確で表現豊かなラインも加わって、きわどいバランス点の多いスローなパ・ド ・ドゥを踊る二人はまるで磁器の人形のようでした。気高く落ち着いたコールドは貴族らしい、ロシア風の雰囲気を添え、素晴らしい力強さと柔軟 さを見せました。

 続いてはミッシェル・ワイルズとデイヴィッド・ホールバーグの“グラン・パ・クラシック”です。大胆なスタイルと惚れ惚れするようなバラン スをもつワイルズは、ポワントでアラベスクを何秒も保って観客をあっと言わせ、ホールバーグは素晴らしい筋肉の脚で華麗な跳躍を繰り出しました。  

 最後の作品“シンフォニエッタ”では管楽器隊がオーケストラ・ピットから抜け出してステージを縁取る様に取り巻きました。この全5部に分か れたイリ・キリアンの振付は、自然の中の共時性に焦点を当てていました。ダンサーたちの流れるような衣装と軽やかな動きが、背景に描かれた なだらかな丘の水彩画のような色彩によく似合っていました。ダンサーたちが次々にピルエットで終わるジャンプのステップを繰り出すというウェ ーブのような構図は、高い草を駆け抜ける鹿や、不規則に見えて完璧に構成された鳥の飛翔パターンの有機的な美しさを思わせました。

芸術性 ★★★★
娯楽性 ★★★★
斬新さ ★★★
癒し度 ★★★

 

(Updated on 3/03/05)

フィルム レビュー

 

School of Rock


Reviewed on 10/28/04 by Taro Enjoji
Produced by UIP
Publicity Agent

こんな先生に習ってみたい

 今回は昨年(2003年10月)に公開された映画『School of Rock』の紹介をしましょう。監督は印象的な名品を撮るリチャード・リンクレイター(Richard Linklater)が手掛けており、主人公デューイを演じるのは『メリーに首たっけ』『愛しのローズ・マリー』でも有名なジャック・ブラック(Jack Black)です。

 主人公のデューイはロックをこよなく愛するギターリストです。メジャー・デビューを夢見る彼のステージは破天荒で、遂には自分で結成したバンド仲間からもクビにされてしまいます。ろくに働きもしないデューイはルームメイトで親友のネッド (Mike White)からも長期に渡る家賃滞納のために追い出されようとしていました。そんな折にネッド宛てに名門私立小学校からの代用教員の電話がきて、チャンスとばかりにデューイはネッドに成り済まして彼は臨時教員となります。教員として張り切って学校に通うデューイですが、そこは徹底的に管理された教育がなされている、デューイが想像していた世界とは違う世界でした。最初からまともに授業をする気など全くないデューイでしたが、偶然にも音楽教室の前を通り過ぎた時、自分のクラスの生徒達が音楽の才能がある事に気がつきます。そしてデューイはあるとてつもない事を考えて自分の夢の実現に生徒達を巻き込んでいくのでした。果たしてデューイと生徒達はどような結末を迎えるのでしょうか。

 昨年公開されたこの映画は当初の予想とは反比例するかのように沢山のリピーターを得、ニューヨークでは4週連続1位の興行成績を収め、公開1ヶ月で早くも9000万ドルを超える全米でも大ヒットの映画となりました。デューイ役のジャック・ブラックは実際に演奏も自身でやっており、子供達も言わゆるハリウッド的な子役は一切使っておらず、演奏が出来る事を第一条件に選抜されており、演技も撮影が進むたびに上達していきました。この映画は教育映画のような説教的な場面は一切見られず、また学校を舞台とした映画とは全く異るベクトルで構成されています。アメリカ映画では中々見られない容姿風貌の主人公デューイが子供達と心が通う様子やお互いに成長する過程が、ユーモアを交えながら描写されていて、老若男女を問わずに素直に楽しめる作品に仕上がっています。 またこの映画は実際に映画の中で演奏した曲をジャック・ブラック自身がプロデュースしてCD化してあり、ロックファンだけでなくても一般の音楽ファンも楽しめる作品となっています。

 いつの日か日本にもこんな先生が現れて欲しいと映画を観終わって強く思いました。

(Updated on 3/2/05)

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