| 旅の途中で行き先を失しなってしまったことがありますか?乗っている列車があなたをどこへも運ばないとしたら、なにを想うでしょう。「さらばわが愛」「紅いコーリャン」の中国映画女優コン・リーが演じる「たまゆらの女」の主人公チョウユウは月のように形を変えて現れる愛の光と影を浴びながら旅を続けます。
ベトナム国境沿いの古都建水に住むチョウユウは白磁の絵付け師。彼女はある日、詩人チェンチン(レオン・カーファイ)から詩を送られ恋に落ち、彼の住む遠く離れた街重慶までの列車の旅を始めます。しかし、十時間をかけて彼に逢いに行くチョウユウの愛情は募る一方なのに対し,チェンチンは最初の熱情を失っていきます。そこへ彼女の前にもう一人の男性,獣医を営むチャンが現れます。チェンチンと対照的な彼は、無骨ながらも誠実で安定した愛情をチョウユウに注ぎ、彼女は彼を受け入れるものの,結局は彼女の心が詩人の元を離れないという事が浮き彫りになります。チョウユウはチェンチンが重慶を離れた後も,彼の家に通い続けることになるのです。物語には,髪を短くしたコン・リーが演じるもう一人の女性、シュウの存在によるひねりがあります。シュウは「わが天空の湖ーチョウユウに捧ぐー」と題されたチェンチンの詩集を抱え,彼の作品世界を旅しながらチョウユウの影に自分を重ねていくのです。二人の女性を魅了した彼の詩は何を語っているのでしょうか。
過去と現在のシーンを交差させ,情熱的なチョウユウと冷静なシュウの視点を絡めていく編集は,行き場を失った愛に戸惑い、苛立つ女の気持ちを効果的に見せる仕上がりになっています。また、スン・チョウ監督は、原作では特に強調されることのなかった列車の移動のシーンをふんだんに起用しています。窓から見える移りゆく景色,列車がトンネルを通過する様子,気怠く煙草を吸いながら座席の間を通り抜けていくチョウユウの姿。それらの映像のつながりは,せつない想いで恋人の元に通う彼女の心情をよく伝えています。そしてそのやるせなさをさらに高めるような、胸に迫る音楽は「花様年華」を手掛けた日本人作曲家の梅林茂によるもの。
詩人が天空の湖を夢見たように,女性二人も愛の源泉を求めて漂います。私たちは,彼女たちの眼を通して、様々な形をとる愛というものを垣間みることになるのです。
芸術性 ★★★★
娯楽性 ★★★
斬新さ ★★★
癒し度 ★★★★
(Updated on 8/03/04)
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